脳血管障害は脳卒中とも呼ばれます。脳卒中は最近死亡率こそ減少したものの、発症数からみれば三大成人病(脳卒中、悪性新生物、心疾患)の中でトップを占めるわが国の国民病で、寝たきりになったり介護が必要になる疾患のなかでは、断然トップをキープしています。
脳卒中は脳の血管が詰まったり(梗塞)、あるいは破れたり(出血)して脳の機能が障害される病気の総称です。脳卒中という言葉は、「脳が急に(卒然と)悪い風に当たる(中る)ためにおこる病気」だと昔の人たちに解釈されたことに由来します。脳卒中は有効な治療が出来る時間が極めて限られているため、治療は時間との戦いです。
脳神経外科では重症で、手術が必要な大きな脳出血やくも膜下出血を診療します。脳梗塞の場合も、脳の血管が細くなっていたり詰まっているときは血管を拡げる手術や頭皮の血管を脳の血管につなぐ手術が必要となることがあります。
くも膜下出血(図1)は頭をハンマーで殴られたような突然の頭痛で発症します(図2)。原因は主に脳動脈にできた瘤(こぶ)が破裂するためで(図3)、最初の脳動脈瘤破裂で命にかかわる状態となることもあります。脳動脈瘤は大変再破裂を来たしやすいので、再破裂予防を目的として手術が必要となります (図4)。脳動脈瘤の手術は小さな金属製のクリップで脳動脈瘤を閉じてしまうクリッピング術と、脳の血管に細い管を入れ、脳動脈瘤にコイルを詰める血管内手術があり、症例に応じてこれらの手術治療方法を選択します。当院では大脳皮質運動野の電気刺激による筋誘発電位測定や、通常の顕微鏡手術に加え神経内視鏡を用いた手術を行っています。これらにより手術の合併症を防止し、安全で確実な手術を行うことが可能となっています。脳出血は、主に高血圧症により脳の細い血管が破れるために生じます。出血した部分の脳実質は破壊されるため、出血部位によりさまざまな症状が出現します。出血が大きくて生命にかかわる場合や、運動をつかさどる大切な神経線維が圧迫を受けている場合は手術を行なう必要があります。
当院では脳卒中ケアユニットを設けており、脳卒中に特化した専門的、集学的治療を実践しています。手術後は積極的に早期からベッドサイドでのリハビリテーションを開始し、早期離床をめざします。