福岡市民病院

ハートセンターの取り組み

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

狭心症とは、心臓の表面を走っている冠動脈の狭窄または攣縮によって心臓への血流が妨げられるために生じる病気です。労作時に胸部圧迫感や息切れが認められる場合は冠動脈の狭窄(労作性狭心症)が、安静時に認められる場合は冠動脈の攣縮(冠攣縮性狭心症)が疑われます。病態によって薬物療法に加えてインターベンション治療が必要となったりしますので、きちんとした診断を行うことが大切です。

冠動脈病変が進行し血流が途絶してしまうと心筋梗塞になります。多くの場合、粥腫の破たんにより突然発症します。一刻も早く、詰まった冠動脈を広げてやり、血流を再開させることが大切です。当院では、必要があればいつでも速やかに心臓カテーテル検査及び治療を行える体制を整えていますので、生汗が出るような胸痛が15分以上続く場合は、直ちに救急車でご来院ください。

冠動脈の治療目的は、狭窄解除ではなく虚血の解除と生命予後改善です。粥種性状や虚血評価のために冠動脈造影のみならず様々なモダリティーを用いて治療方針を決定することになります。当院では冠動脈CT、FFR(冠血流予備量比)、IVUS(血管内超音波)、OFDI(光干渉断層画像)を症例に応じて使用しております。

急性心筋梗塞の一例

カテーテル治療:治療前
治療前

カテーテル治療:治療中
治療中

カテーテル治療:治療後
治療後

77歳、女性。朝食中に胸痛が出現し、救急車で来院。来院時心筋脱酵素の上昇は無く、心電図のST上昇と心エコーで壁運動異常を認めた。緊急カテーテル検査を施行し、左冠動脈(左前下行枝)の完全閉塞を確認。引き続きカテーテル治療施行。
その後、内服調整や心臓リハビリなどを行い、第11病日に自宅退院。現在当科外来に通院中。

FFRの一例

FFRの一例イメージ

冠動脈造影にて左前下行枝にAHA75%のびまん性病変を認めた。FFR実施し有意な低下を認めた(0.80以下)ため、引き続き冠動脈形成術施行。(左:冠動脈病変、右:FFR値)

OFDIの一例

OFDIの一例イメージ

冠動脈狭窄病変に対してOFDI施行。高解像度(20~30μm)で血管構造や動脈硬化性状、ステント留置後の圧着も精細に観察可能。(左:治療前、右:治療後)

心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が障害されたために生じる一連の症候群です。心臓のポンプ機能が障害されると、静脈から動脈へ十分な血液を駆出できなくなるため、静脈圧が上昇し、肺うっ血や全身の浮腫が生じます。急性期は、利尿薬、血管拡張薬や強心薬などを用いて、血行動態の改善を目標に治療を行っていきますが、長期的には、心臓のポンプ機能が低下した原因を明らかにし、それに対する治療を行うことが大切です。心不全の主な原因は、高血圧症、心筋梗塞、弁膜症、不整脈、心筋症です。治療は、お薬だけで十分な場合もありますが、必要に応じて心臓カテーテル検査や手術をお勧めしております。

心不全:治療前
治療前

心不全:治療後
治療後

急性心不全:42歳、女性。数日前より尿量が減少し、手足が浮腫んできたため近医を受診。
胸部X線写真にて心拡大と肺うっ血を認めたため、当科へ紹介となった。

不整脈

不整脈には脈が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)、脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)、タイミングが乱れる不整脈(期外収縮)の大きく3つに分類されます

徐脈性不整脈とその治療

正常な心拍数は1分間に60~100回ですが、1分間の心拍数が60回未満になった状態を徐脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)と言います。心拍数が少ない場合でも、症状を伴わず治療の対象とならないことがあります。徐脈性不整脈の中には永久ペースメーカーの植え込みが必要となる場合があり、徐脈性不整脈の種類(洞不全症候群、房室ブロック)や不整脈に伴う症状(めまいや眼前暗黒感(目の前が暗くなる感じ)、失神、息切れなど)などを総合して判断します。不整脈の発作は短時間で治まるものもあり、診断が困難な症例も多くあります。当院ではホルター心電図やイベントレコーダー、ループレコーダーなど長時間の不整脈記録デバイスを使用し、正確な診断ができるよう取り組んでおります。令和4年度より、小型で長時間の不整脈記録ができる新規のホルター心電図(Heartnote®)検査を導入しました(図1)。令和4年度の1年間で67件の検査を施行しました。 長時間ホルター心電図の導入によりこれまで見つからなかった不整脈の診断につながるケースも増えています。 永久ペースメーカー手術の年度ごとの件数をグラフに示しています。ペースメーカーには胸部の皮下に本体(ジェネレーター)を植え込み、静脈を通してリードを心臓内に留置する従来型のペースメーカー(図2)と、本体そのものを心臓内に留置し、リードが不要なリードレスペースメーカー(図3)があります。当院でも令和5年度よりリードレスペースメーカーの使用が可能となりました。

不整脈イメージ

不整脈イメージ
簡単に装着できる、絆創膏タイプのコードレス型

Hearynote®は外出しの誘導コードがなく、すべての機能を薄型・軽量サイズに収納。過度な柔軟性があり、粘着テープでムリなく装着できます。

不整脈イメージ
防水性能 IPX4/IPX7対応で、半身浴もOK

装着したままシャワーや半身浴が可能です。夏場に入浴できない不快感もありません。また、冬場はヒートショックの評価も可能となります。

不整脈イメージ

図1 長時間ホルター心電図(Heartnote®)の特徴 提供 JSR株式会社

不整脈イメージ

図1 長時間ホルター心電図(Heartnote®)の特徴 提供 JSR株式会社

最大7日間の計測が可能

コンパクトながら、最大で7日間の長時間計測が可能です。長時間の計測により不動脈の検出率が大幅に向上し、早期発見・早期治療につながります。また、24時間計測では捉えにくい発作性心房細動(PAF:Paroxysmal atrial fibrillation))などの検出も可能となります。

不整脈イメージ

図2. 従来型のペースメーカー

不整脈イメージ

図3.リードレスペースメーカー(Micra®)
提供 日本メドトロニック株式会社

不整脈イメージ

頻脈性不整脈とその治療

頻脈性不整脈は通常よりも脈が速くなることで、動悸や息切れ、ふらつき等の症状を生じます。不整脈の種類によっては命に関わるもの、電気ショック治療が必要となることもあります。薬物療法、カテーテルアブレーション治療が検討されます。近年カテーテルアブレーション治療の進歩により、全ての不整脈に対して根治的治療として積極的にカテーテルアブレーションを行うことが増えてきています。

代表的な不整脈:発作性上室性頻拍(房室結節リエントリー性頻拍、WPW症候群)、心房頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍等

カテーテル治療:治療前

カテーテル治療:治療中

カテーテル治療:治療後

カテーテル治療:治療後

カテーテル治療:治療後

カテーテルアブレーション

当院では平成20年からカテーテルアブレーション治療を積極的に行っています。 カテーテルアブレーションでは、最新の3Dマッピングシステムも活用しながら、頻拍の原因となる起源・回路を同定し、電気(高周波)を使って心臓の一部にわざとやけどを起こさせることで不整脈の根治を行います。薬物治療では病気を抑えるだけで、病気がなくなってしまうというわけではなく、副作用が生じる可能性もあります。病気によって治療の成功率が異なりますが、カテーテルアブレーション治療では根治が望めます(図1)。 高齢化に伴い近年増加している心房細動は、心不全や脳梗塞の原因になることが知られています。心房細動は通常動悸、息切れ、胸部圧迫感などの様々な症状を呈しますが、自覚症状がなく脳梗塞を発症して初めて心房細動を指摘される場合もあるため注意が必要です。心房細動はほっておくと発作性(時々心房細動になる)から持続性(7日以上心房細動が持続する)、長期持続性心房細動(1年以上心房細動が持続する)へと進行し徐々に難治性となります。心房細動が見つかった場合はできるだけ早期にカテーテルアブレーション治療をお勧めしています。

カテーテル治療:治療前
図1.カテーテルアブレーションイメージ図

カテーテル治療:治療中

カテーテル治療:治療後

発作性心房細動と持続性心房細動

左心房の電位の大きさを可視化したVoltage mapです。紫色が正常電位であり、紫→赤色になるに従い低電位となります。左図の発作性心房細動では心内電位は正常ですが、右図の持続性心房細動では左房前壁がまだら模様となっており左房の変性(低電位)が進んでいることがわかります。

不整脈イメージ

  • 左上図:アブレーション治療後の左房(後壁)voltagemapです。
    肺静脈が隔離されています
  • 左下図:赤丸、白丸がついている箇所が通電したポイントです
  • 右上図;カテーテルアブレーション中の透視画像です
  • 右下図:3D上に表示されたアブレーションカテーテルです。

また、令和2年度からは心房細動に対して冷凍バルーンアブレーション治療も開始しました。

不整脈イメージ

不整脈による症状(動悸、脈飛び、ふらつき等)でお困りの方はいつでも当院不整脈外来(毎週火・水曜日)でお気軽にご相談ください。

不整脈イメージ

高血圧

血圧の高い方(高血圧症)、血糖が高い方(糖尿病)、コレステロールが高い方(高脂血症)は、そうでない方に比べて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが高いことが知られています。生活習慣の改善が治療の基本ですが、最近の大規模臨床試験では、これらの病気をお薬できちんと治療しておくと、心筋梗塞や脳卒中などによる心血管病死を予防できることが証明されています。検診などでこれらの病気を指摘された方は、症状がなくても、早めに受診していただくことをお勧めします。また、お薬を飲んでもなかなか血圧が下がらない方は、ホルモンや血管の病気などが隠れていることがありますので、是非お気軽にご相談ください。

診療内容についてのお問い合せ先

福岡市民病院 循環器内科 TEL:092-632-1111(代表)

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