消化管センターの取り組み
食道、胃、小腸、大腸、肛門、脾臓、腹膜に発生する様々な病気を対象としており、消化管内科専門医と消化管外科専門医が協力して診断・治療を行っています。
当院には肝・胆・膵センター、脳神経・脳卒中センター、糖尿病センター、腎センター、ハートセンターなどのサブセンターが併設されているため、高齢者や肝硬変、糖尿病、脳卒中、心臓病などの全身合併症を有するハイリスクな患者さんが多いのが特徴であり、専門医療チームと協力して、安心・安全な消化器治療を行っています。
内科部門
消化管内科は、消化管腫瘍、消化管出血、炎症性腸疾患などの消化管疾患を中心に診療を行っております。また内視鏡治療では腫瘍性病変に対する内視鏡的切除術(EMR・ESD)、消化管出血に対する内視鏡的止血術を中心に行っております。
内視鏡検査数の推移
令和元年度は上部消化管内視鏡検査1,707件、下部消化管内視鏡検査928件、超音波内視鏡検査(腫瘍深達度診断、粘膜下腫瘍の診断など)78件を行いました。
年度別内視鏡件数
内視鏡治療の動向
早期癌やポリープの内視鏡的切除術、消化管出血に対する内視鏡的止血術を主に治療を行っております。平成26年度より大腸病変に対する内視鏡的粘膜下層剥離術を開始いたしました。令和元年度は食道・胃・大腸における内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を83例、下部消化管においてEMR・ポリペクトミーを365例施行しました。
出血性胃十二指腸潰瘍・食道胃静脈瘤などに対する緊急内視鏡検査にも24時間対応し積極的に行っております。昨年度は113例止血術を行っております。
年度別内視的消化管粘膜切除・粘膜下層剥離術件数
年度別内視鏡的大腸ポリペクトミー・EMR施工数
今後の取り組み
内視鏡診療に関する患者さんの安全性、プライバシーの保護、ホスピタリティの改善などの問題を改善すべく、当院内視鏡室は平成26年11月にそれまでの本館3階から1階へ移転いたしました。今後も患者さんが安心して当院で診療を受けて頂けていただけるよう、消化器内視鏡関連の安全性の確保、業務の改善を行い、よりアクセスしやすい病診連携の環境を整備して参りたいと思います。
外科部門
消化管センターとして、消化管内科と共に幅広く消化器疾患の治療を行っています。 食道癌, 胃癌, 大腸癌に対しては、手術, 化学療法, 放射線療法(他院と連携)を組み合わせた集学的治療によって、各症例に対して最適な治療法を提案しています。 化学療法は、外科・内科・薬剤部・がん専門看護師によるカンファレンスを毎週行い、個々の症例に対する治療戦略を検討しています。 その他、鼠径ヘルニアや尿膜管遺残、正中弓状靭帯圧迫症候群といった症例に対する腹腔鏡手術も積極的に行っています。 急性虫垂炎や腸閉塞などの救急疾患に対しても24時間対応します。
2020年度のメンバーは、東副院長・西田消化管外科科長・枝川・西村・河波の5名です。 チーム診療制を実施しており、全ての患者さんを全員で担当することによって、より質の高い医療を提供することを目指しています。
また本年度のトピックとして、食道疾患センターを設立しました。
根治性・安全性・低侵襲性の追及
当科の方針・目標として、根治性はもちろんのこと、安全性と低侵襲性を追及します。
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食道胃接合部癌
近年増加傾向にある食道胃接合部癌に対する手術は、術後の逆流症状のコントロールが重要な課題です。当科では逆流の起こりにくい術式として“観音開き法”による再建を行っており、良好な成績を得ています。
観音開き法再建のための残胃操作
下部食道噴門側胃切除術 観音開き法再建
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胃癌, 大腸癌
開腹術・腹腔鏡手術という術式の違いに関わらず、原発巣の完全切除と徹底したリンパ節郭清が根治性を追求するうえで最も重要と考えています。同時に神経・血管を可及的に温存し、可能な限り臓器機能を温存するよう努めています。
左肝動脈が左胃動脈から分枝する症例に対する郭清
腹腔動脈周囲リンパ節転移症例に対する徹底郭清
左結腸動脈、上直腸動脈を温存した郭清
大動脈周囲リンパ節転移症例に対する徹底郭清
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良性疾患
急性虫垂炎や鼠径ヘルニアに対しては、その大部分を腹腔鏡手術で行っています。 正中弓状靭帯圧迫症候群(腹腔動脈起始部圧迫症候群)や、13cm大の巨大食道脂肪腫といった大変希少な症例に対する手術も鏡視下で行い、学会報告しています。(日本消化器外科学会、日本食道学会)
腹腔鏡下正中弓状靱帯切除術
胸腔鏡下食道脂肪腫核出術
診療内容についてのお問い合せ先
福岡市民病院 外科 TEL:092-632-1111(代表)